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今年も白山中学校に新入生がやって来ます。 四月に入ったというけれど、まだまだ風の冷たいこの朝が、まさに彼らの入学初日、初登校日の朝でした。 雲もかすみもかからない晴れ渡った朝で、おかげで北の空には真っ白な御嶽山(おんたけさん)が、まるで屏風をめぐらせたように迫って見えています。 中学校の正門の付近では、桜の花びらが乾いたアスファルトの上をかるがると転がってゆきます。初めてそこを歩く新一年生のうちには、なぜでしょう? 彼ら自身にもよく分からないのだけど、それを見てもやもやと重くのたくる不安が胸に湧いてくる子たちもいました。 きびしいのか優しいのかまだ見当もつかない先生方にクラス分けをされて、なにやらちょっと古めかしいにおいと影の漂う教室に導き入れられた彼らは、もう一度改めて、自分と同じ小学校からやって来た子はだれがいるの? とくるくると細い首を回したりしました。 ・・・
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