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私はこの少年が気に入った。
ただそれだけのこと。
そうして私と少年は夫婦(めおと)になった。
それから、少年のように村に引き取られ、似たような境遇に置かれている子を名指しで全て捧げるよう村長に伝えた。
少年少女たちにはできるだけ上等の服を着せ、食べ物も三日に一度は運ぶように言いつける。
生贄の代わりに負担が増えてしまったかもしれないが私の言うことを聞かなかったのだ。それぐらい甘んじるべきだろう。
少年少女たちについては一部を除き、他の神の元へ送った。一応人間に対して無体な扱いをしない神を選んだつもりである。
「僕、今更ですけど村の人たちに感謝しているんです」
夫となった少年がある時ぽつりと呟いた。
「ひどい扱いを受けていたのではなかったか?」
「それはそうなんですけど、でも貴女に会えたから……」
なんと可愛い夫なのか。恥ずかしそうに言う夫を押し倒そうとしたが、
「水神さま! そういうことはお布団でしてください!」
ここに残した少女に怒られた。
山の上の社は騒がしい。私もここに赴任することになってよかったと夫を含む彼らに微笑んだ。
おしまい。
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