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悠真はベンチを片付けて、チームメイトとコートから出て行こうとして一旦立ち止まった。二言三言話しをして荷物を足元に置くと、俺達の下まで駆けて来て、悔しそうにしながらも、笑顔になって言った。
「せっかく応援に来てくれたのに、負けちゃった。
今日はありがとう!
ミーティング、長引きそうだから、先に帰ってて。
ごめんね。」
「待って!悠真!」
そのまま立ち去ろうとした悠真を、手塚君は呼び止め、拳を差し出した。
悠真は、溶けそうな笑顔で拳を突き上げ、もう一度「ありがとう!」と言って、走り去ろうとした。
「待ってるから、一緒に帰ろう。
俺、今すごく…悠真を抱きしめたい。」
周りの人が振り返っても構わずに、手塚君は続けた。
「悠真の事を、他の誰かに任せたくない。
俺が傍に付いていたい。」
人目も憚らず、悠真を見つめる。
「な…えっ?あ、ちょ、ちょっと待って!」
慌てる悠真に、追い討ちをかけるように唇は動いた。
声には出さず「好きだ。」と。
隣で見ていて、こちらが恥ずかしくなるくらい、真っ直ぐに、悠真を見ている。
妬きもちに端を発して、手塚君に火が点いたのだとしても、根底にあるのが悠真に対する想いであるなら、それはそれで…。
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