老剣

6/6
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 山賊のねぐらである洞窟は、すぐに見つかった。 「なんだぁ、てめぇは!」  見張りだろうか。  無精ひげを蓄えた大柄な男が、孫兵衛を見つけ、近づいてくる。 「ここに、何の用だ!」  距離にして、三間。  一足飛びに間合いを詰めると、孫兵衛は居合いで相手を両断した。  声もなく、男は倒れ伏す。  孫兵衛は、そのままするすると滑るように、洞窟に踏み込んでいく。  目に入ったものに対し、機械的に刀を振るう。  山賊たちを次々と屠っていったが、なにしろ数が多い。  最初は混乱していた山賊たちも、徐々に事態を把握し、反撃し始める。  孫兵衛の、息が切れてきた。  孫兵衛は、山賊たちの連携の中心を見定めようと、目を凝らした。  いた。  山賊たちに指示を出している、一人の男。  若い。  その男に向け、孫兵衛は足を踏み出す。  途中、何人かの山賊が孫兵衛を遮ろうと、向かってきた。  全てを斬り伏せたが、孫兵衛の方も何箇所か手傷を受けた。  男が山刀を抜く。  かなりの手練れだ。  二、三度打ち合う。  すでに、孫兵衛の腕の感覚はなくなっている。  男の山刀が、孫兵衛の腹から背中を貫いた。  同時に、孫兵衛の刀は男の両眼を斬り裂いていた。  どう、と孫兵衛が倒れる。  にぃ、と口の端から血を滴らせ、言った。 「奪ってやったぞ、貴様の未来を」  次の瞬間、山賊たちの刀や槍が、孫兵衛の老いた肉体を刺し貫いた。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!