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蓮は桜の部屋のドアをノックすると、ドアを開けた。
「入るぞ」
部屋の中は生活感がまるで無く、この部屋の主はもう居ませんと、空気感で伝えている様だった。
クローゼットの中には、赤と黒のメイド服と、昨夜、桜が着ていたコートワンピースがかけてある。
ドレッサーの鏡に一枚のメモ用紙が貼られていた。
蓮はメモを剥がして、視線を落とした。
「桜さんは帰ってきてるんですか?」
階段の下から、雲井の大きな声が聞こえた。
“白花蓮 様
実は、私が白花家で働く事になった経緯は、偶然ではありませんでした。
それについては、お詫びしなければなりませんが、詳しい内容は御容赦下さい。
もし、私に盗みのルールがあったとしても、生身の人間への使用は不可能で、ルールなんて自己満足でしかないと思い知りました。
私の行動は不実でした。
家の鍵は郵送にて、後日お返し致します。
短い間でしたが、ここで働いた日々は、私の人生の中で最高の思い出になりました。
ありがとうございました。
お元気で。”
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