12 松染鈷直という女

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蓮は桜の部屋のドアをノックすると、ドアを開けた。 「入るぞ」 部屋の中は生活感がまるで無く、この部屋の主はもう居ませんと、空気感で伝えている様だった。 クローゼットの中には、赤と黒のメイド服と、昨夜、桜が着ていたコートワンピースがかけてある。 ドレッサーの鏡に一枚のメモ用紙が貼られていた。 蓮はメモを剥がして、視線を落とした。 「桜さんは帰ってきてるんですか?」 階段の下から、雲井の大きな声が聞こえた。 “白花蓮 様 実は、私が白花家で働く事になった経緯(いきさつ)は、偶然ではありませんでした。 それについては、お詫びしなければなりませんが、詳しい内容は御容赦下さい。 もし、私に盗みのルールがあったとしても、生身の人間への使用は不可能で、ルールなんて自己満足でしかないと思い知りました。 私の行動は不実でした。 家の鍵は郵送にて、後日お返し致します。 短い間でしたが、ここで働いた日々は、私の人生の中で最高の思い出になりました。 ありがとうございました。 お元気で。”
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