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歩きながら斎藤君からカメラの話を聞いた。 練習の為に郊外にある動物園にニホンザルの写真を撮りに行っている事や、この前、どうしても夜景の写真が撮りたくなって街が見下ろせる山の上までいったけど、帰りバスが無くなって帰ってくるのに苦労した話、どれも斎藤君が本当に楽しそうで僕まで嬉しくなった。 だけど、ほんの少しだけそんな斎藤君がうらやましくもあるんだ。 僕には何もないから、好きな事がある斎藤君がうらやましい。 そんな事を思っているうちに自宅についた。 斎藤君に「ここがそう。」と伝えると、10階建てのマンションを見上げ、「すげーとこに住んでるんだな。」と言われた。 「姉の会社と自宅は1,2階だから。」 苦笑を洩らしながら僕がいう。 すると斎藤君は、ニヤリと笑いながら 「じゃあ、荷物運びは楽だ。」 と言った。 一階にある、事務所に斎藤君と顔を出すと、そこには鬼の形相で指示を出す姉の姿があった。 これは、少し待った方がいいと判断して斎藤君に声をかけようとしたところで、姉と目があった。     
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