二ツ星恋愛恋慕

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次の日も雨が降っていた。空には重く雨雲が広がりしとしとと降り続いていた。 「先生……」 「……また君は」 差し出されたのは昨日、彼に押し付けて帰った自分の傘だった。 俺は、何も言わないで受け取り折り畳み傘を差し歩き出した。 これでいい……このままでいたいなら、彼を遠くで見ているだけの日常に戻ればいい。 俺は……彼の傍にずっといたい! 「……っう」 「先生……なんで泣いてんの? 目…真っ赤だし、ずっと泣いてたの?」 「……なんでもないよ。昨日、濡れて帰ったら体調が悪いんだ。君も早く帰りなさい」 「嘘だ!」 両方の腕を掴まれ体が熱くなる。その熱で頭がぼーっとする…… 「やめ……離せ!」 「やだ!!」 「……苦しい。君に触れられると…苦しいんだ」 「……じゃ、もっと苦しんでよ! ずっとずっと苦しかったんだから!」 彼が下から奪うように俺の唇にキスをした。体の熱か引き、唇の感触に俺は呆然と彼のキスを受けていた。 「……僕は先生が好き! 先生は?」 「……よしなさい! 大人を揶揄うな!」 「嘘だ! どうして? 好きでだよね?」 「……好きじゃない!」 「先生……狡いよ……ずっと僕を見てたくせに!」 走り去った彼は泣いていた。こんな筈じゃなかった。泣かせたいわけじゃないのに……
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