不死の通信兵と次代の魔女

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不死の通信兵と次代の魔女

   雨が降っている。  顔に水滴がかかり、鼻から吸い込んだ空気が湿っている。  皮膚感覚があり、呼吸をしている。それは、生きている(・・・・・)ということだ。 「ねぇ、いい加減目を開いて頂戴」  雨音の中に、異質な幼子の声。俺は未だ硬直の残る瞼を薄く開いた。俯いて死んでいたために、見えたのは己の血塗れの衣服と草地、そして小さな子供用の革のブーツだった。 「……まぁそれでいいわ。首が動くなら顔を上げなさい」  如何にも不快そうな子供の声に、笑おうとしたが、唇がひくひくと痙攣しただけだった。 「軍も、とうろう、人材不しょく、か?」 「やめて。舌っ足らずが可愛いのは幼児だけよ。黙って聞きなさいラッド・ダリス」  罅の入ったガラス玉のような眼球をを動かすと、そこには十歳くらいの少女の顔があった。青みがかった透けるような白い肌、人形じみた長く濃い睫、金の瞳。肩口で切りそろえられた黒髪は少女が喋るたびにゆらりと揺れて艶めく。その少女の毒々しく赤い唇からは、懐かしい俺の名前が発せされた。 「……ケネ、しあ」  もう随分と遠い昔に音にしたきりの名前。それに少女は酷く不愉快そうに整った眉根を寄せた。     
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