不死の通信兵と次代の魔女

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 トラックは市街地に入り、砲撃で崩れた建物と、残骸のようなバラックの家々を通り抜けていく。そこを更に十分ほど行くと、裸電球の眩しい元繁華街へとたどり着いた。 『着いたぜ! さぁ降りた降りた、しっかり働いて来い』  怒鳴り声にデンドール語と共用語が入り交じる。無秩序な店並びと呼び込みに負けじと皆大声で叫んでいた。  ルーシーを抱えて下ろし、娼婦たちが降りる手伝いをしてやると「じゃぁね」とあっさりとした別れの言葉と同時に幾人かにキスをされる。流石に唇は避けたが、ぺたりとした脂の多い口紅の感触が頬に残った。 「ラッド」  シャツの裾を引かれて、ルーシーの目線の高さにしゃがむと、ルーシーの指が口紅の着いていただろう場所を不思議そうに擦り、顔を近づけてきた。 「ルーシー、待て」  それを遮り、俺はルーシーの前髪をあげて額にキスをした。ルーシーはまだ納得いかぬ様子で割れガラスの青い瞳を俺に向けた。 「女のひとが、そうしていたわ」 「してもいいけど、大人と子供は唇同士でキスをしない」     
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