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「角が共振を起こす周波数だ。直接頭に響いてるのと同じだからな、そりゃあ辛いだろうさ」  事も無げな言い様に凪子はぎり、と軋むほど奥歯を噛みしめる。唇を堅く引き結び、鵜野を睨めつけて片手で取り出した札をばさりと広げた。 「冥府へ送ってやる」  低く呪詛のように呟いて、二十枚はありそうな札の束を翳して口の中で短く呪文を唱える。ぱっ、と宙に放つと、凪子の周囲に囲むように展開した。  切っ先を下にして構え、ぐっ、と膝を沈ませる。札を引きつれて気合の声と共に大鴉に突進した。  逆手に持った大通連の柄で鴉の顎を下から突き上げる。ばくん、と勢いよく鴉の口が閉じ、鳴き声が途切れた。腹を立てたのか、鴉が威嚇するように両翼を広げる。それが打ち振られる前に、凪子は左手を突き出した。  周囲に展開していた札がバララ、と音を立てて広げた翼の付け根に重なって貼りつく。 「爆ぜろ」  低い一言に応じて、札が火を噴いた。  翼の内側の羽毛は柔らかかったらしく、たたむことのできなくなった翼が、だらりと床に落ちる。  苦しげに頭を振り、苛立ったように足を踏み鳴らした鴉は、再び口を開け声を上げた。先程のものより威力を増したそれに、凪子も思わず顔を歪める。 「ちょ、朱雀! 」     
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