なんですって

18/23
15388人が本棚に入れています
本棚に追加
/49ページ
どうして私は、されるがままに隠れてしまったのだろう。 フレンチレストランに繋がる通路から角を曲がり、少し離れて大きな柱の影に入った。 ふわりとグリーンが薫る。彼の香水だ。 「あの……さっきの縁談の話」 「はい」 「本当に? 私と?」 信じられなかった。茶会で顔を見たことがある、それだけの私にどうして彼が縁談を申し込むのか。 考えられることはひとつだ。 「……政略結婚ですか」 「その通りです。花月庵の味と顧客が欲しいと言ったところ、ふざけるなと怒られました」 「当たり前です。何言ってんですか」 ぎょっとした。よくもまあ、馬鹿正直に。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!