第4章 妹と合コンに参加した結果

9/28
42人が本棚に入れています
本棚に追加
/180ページ
「それにしてもすごいよな、あいつも」 なんだかその場に妙な空気が流れつつあったので、話題転換の意を込めて俺がそんなことを口にすると、かなえが「え?」とこちらに視線を向ける。 「お前もそうだけどさ。自分の好きなことを全力で頑張れる奴ってすごいよ。エネルギーの使い方を間違ってない」 取り繕うとか、空気を読むとか、そういうことはあまり考えないで言ったことだけに、それが俺たち二人にとってどんな言葉なのか、どんなことを意味するのか。それをを認識するのに時間がかかった。 だから、気づいたころにはもう遅かった。 かなえが最近はほとんど見せていなかった「あの顔」になってしまっていたのだ。 「兄さんはさ…やっぱりまだ…」 かなえが伏し目がちに何かをつぶやく。よく聞き取れなかった俺は「え?」と聞き直す。 だけど、かなえは首を横に2度3度振ると 「…ううん。何でもない」 そう言ったきり、何も話さなくなってしまった。 そのどこか重々しい空気に耐え切れなくなって、俺が「やっちまったなぁ!」と某お笑い芸人のギャグを心の中で叫んでしまったのは、なんとも悲しい現実逃避だった。
/180ページ

最初のコメントを投稿しよう!