鬼さん、どうぞこちらへ

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鬼さん、どうぞこちらへ

腹が減った。ふとそう思った。だから目についた人間の集団を食らった。俺は鬼だ。人を食らう、悪鬼とも言われることもある。 人が鳥や兎を食べるのと同じように俺は人を食べる。 ぶちぶちっと肉が引きちぎれる感触がたまらなく好きだ。人間は苦痛を与え尽くして食らうのが一番良い、味も塩をかけたかのように引き締まるし、何よりも人間の苦痛への反応は気分が高揚する。 食べる人間の年齢は好き嫌いは鬼によって分かれるが、やはり若い奴を食らうのが一番だ。身についている肉もしっかりしているし、柔らかくてとにかくうまい。 年がいっているのは骨ばかりで食えるところが少ないのでよっぽどの悪食でなければ、好んで食う鬼は少ないだろう。 今食った人間どもは、今の世で言う盗賊とだったのだろう、とりあえずここにいたのを食ったが縄に縛られた女がいた。少なくはない人数だったと思う。人が人を襲い殺しあうのはなんともおろかだと思う。 何人かの女は逃げられたが、食欲もそれなりに満たされたから追う気はなかった。他の妖怪に食われるか人間に襲われるか助けられるか。まぁ俺にはどうでもいい話だ。     
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