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俺がアタックしたボールを岡田がレシーブしようとするが、ボールはコートの外へ飛び出していく。
ボールの行方を目で追っていた俺は、ヒヤリとした。
広崎の顔すれすれの所を、ボールが通過していく。
「きゃっ。」
よけようとして後ろに下がった広崎が、バランスを崩して、ふらふらとよろける。
――危なっ。
何とか体勢を立て直したのを見て、ほっとしたのも束の間、広崎に話しかけている岡田が気になって、落ち着かない。
無意識に俺は、足早に歩いて岡田の隣りに立っていた。
広崎の顔を覗き込む岡田の視界を遮るような位置に手を伸ばして、顔にかかった髪をすくい上げる。
「この辺、赤くなってる。擦ったんじゃないの。」
そのまま指の関節で、頬にそっと触れてみた。
――熱い。
ほんの少し触れただけで、広崎の顔の火照りが伝わってくる。
熱が、あるんじゃないか?
やっぱり昨日、雨の中、長い間俺のこと待ってたから…。
広崎は顔を赤くして、俺にされるがままになっている。
「わ、ごめんな広崎。じゃあ保健室に…」
岡田の呼びかけに、広崎が顔を上げて返事を返そうとする。
「あ、うん…」
「いいよ。俺が連れて行く。」
反射的に、岡田の言葉を阻止してしまった。
「え、でも、俺がレシーブをミスったボールのせいだし…」
「いや、俺がアタックしたボールだから。」
「……」
岡田が、は?という顔をする。
…分かってる。やっぱ、おかしいよな。その理由。
俺もそう思う…。
だけど……。
俺は、チラリと広崎の顔を見た。
たぶん、熱のせいだろう。
いつもより、どこかぼんやりしているその瞳は、うるうると潤んでいる。
…こんな、うるうるの目をした広崎を、岡田と2人きりにしたくない…。
「…あと、俺、突き指したかも。ちょっと痛い…」
わざとらしく付け足してみると、
「そうか?じゃあ、加瀬、頼むよ。」
岡田は素直に納得して、練習に戻って行った。
…ごめん、岡田…。
これ、完全に俺の勝手なヤキモチだわ…。
全く下心のない岡田に、申し訳ない気持ちで一杯になり、俺は心の中で手を合わせた。
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