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新入部員の獲得の為に新二年になった俺は昨日の入学式の翌日から、朝一番で校門の前である種の戦争である。
この戦争は簡単に言えば俺の所属する弱小陸上部の宣伝及び、新入部員の一年生を獲得するものである。
「足に心得のある者はいねっか?主に短距離に心得のある者はいねっか?」
アップに纏めた後ろ髪にキリリとした、瞳に顔立ちの新三年の『七向 蓮華』先輩である。
なまはげの口調で新入生に話かけるが、その強き眼光でホントにビビってしまい完全な逆効果である。
「少しフレンドリー過ぎたか……」
色々ツッコミをいれたいがやめておこう。先輩にはいつも劣等生の俺は学校の勉強のお世話になっている先輩だ。
「辻堂、やる気が無いな……」
「当たり前です、この弱小陸上部に誰が興味を持ちますか」
わたしは嫌になり暇つぶしに昨日ダウンロードした、音楽をスマホから流す。
♪~♪~
それは天使かと思った……。
音楽に合わせて桜吹雪の校門の前で優雅に踊る舞姫であった。
揺れるアップにした髪、流れる指先、軽やかなステップ……。
「辻堂、いい加減、音楽をとめろ」
「は、はい」
わたしが音楽を止めると人だかりができていた。
「辻堂、宣伝だ!」
「はい、はい、ようこそ、陸上部に……」
蜘蛛の子を散らすように人だかりは散っていった。
「辻堂、お前はわたしに一踊りさせて……」
うぅぅ……またか。
そう、蓮華先輩のお小言が始まったのである。
これは弱小陸上部のぬるいはずの物語りである。
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