第一話 魔物を討つ人々――1

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 広大な砂漠地帯を有するデザルタ大陸。大陸の中心から広がる砂漠を避けて、人々は沿岸地域に都市を築き、生活を送っている。  人々が砂漠を避ける理由は二つ。  一つは砂漠には食料となる動物が生息せず、植物も育たないから。人が生活するには、あまりにも劣悪な環境なのである。  そしてもう一つが、砂漠に生息する魔物の存在であった。  魔物は砂漠の広い範囲に生息する、人間を襲う生物である。全身は黒く発光し、形や大きさは様々。人間や動物の形、形容のできない歪な形のものが、人間の大人ほどの大きさから一〇メートルを超えるような大型のものまでいる。その肉体を刃物で切り付ければ、確かな手ごたえが返ってくる。それなのに命が尽きた途端、その身体はゆらりと空気に溶け霧散して消えてしまう。  魔物がどういった存在なのか、このデザルタ大陸で暮らす人々もよくは知らない。魔物以外に生物のいない砂漠で、どのように生きているのか。なぜ人間を襲うのか。  それでも確かなことは、戦うすべを持たない人間が魔物と出会えば、生きて帰ることはないということである。  だから人々は砂漠から離れ、草原や砂浜の広がる沿岸地域に都市を築いたのであった。     
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