第五章 同衾

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「俺の京さんへの愛がスッピン如きで揺らぐとか思ってもらいたくないな」 「……」 「俺だって風呂に入ってセットした髪の毛洗い流したら小僧に拍車をかけるほど幼くなるよ」 「……」 「そういう俺、見られるの嫌だけどさ、でもそういう俺も知ってもらいたいって思っているから」 「……」 「お相子(あいこ)なんじゃないの?」 「……」 気が付けば私は肢体を伸ばし話し続ける彼の方を見ていた。彼はそんな私にチラッと視線を這わせにっこり笑いながら「スッピンを恥ずかしがる京さんを見られたのは嬉しかったけどね」なんて付け加えた。 「~~~止めるよ」 「え」 「君相手に恥ずかしがるの、もう止める」 「……」 「可愛いんでしょう? ギャップがいいんでしょう?!」 「うん」 「じゃあいいよ、問題ない。君のセット無しの髪の毛も見たいから早くお風呂入って来なよ」 「ふはっ、じゃあお言葉に甘えて入らせてもらおうかな」 彼は書いている途中のものを軽く整頓してそのまま浴室へと向かって行った。 (……なんか不思議) 不意打ちの羞恥に焦りやっぱり男が家にいるのは面倒くさい! なんて一瞬思ってしまったけれど、何故か彼の言葉には羞恥を越えさせるなんらかの力があるように思えた。 恥ずかしがるのが馬鹿らしいと──そんな風に思えてしまうような力が。
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