5人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
プロローグ
恋愛は、人をダメにする――。
母が時折、口にするその言葉の意味を、僕はよくわからないでいた。大抵は、お酒が入った時に愚痴と共に溢すなのだが、男と上手くいかなくなったことを、自分のせいにしたくないためなのだろう。
人間は、悪いことは全部、自分のせいにしたくない生き物だ。もしも、すべてを自分のせいと受け入れてしまえば、きっと心が壊れてしまう。
だからこそ人間は、悪いことはすべて自分ではない誰かに身代わりになってもらうしかない。
心が壊れてしまわないために――。
明日を生きるための術として、身につけた処世術。
しかし、僕が母の言葉の意味を理解していない理由は他にはある。
それは、僕が恋愛をしたことがないからだ。
あの日、君に出逢うまでは……。
最初のコメントを投稿しよう!