26人が本棚に入れています
本棚に追加
/325ページ
まいったな……。昨夜、取り逃がしたのが本当に痛かったな……。昨日、しっかり捕まえることが出来ていたら、こんなに悩む必要もなかったんだが……。
端整な優希の顔に、暗い影が落ちていた。そんな優希の憂鬱そうな表情を見て、女子生徒たちが一斉に悲鳴にも似た嬌声を上げるのだった──。
────────────────
昼休みに入ると、アリスたちは六人は再び部室に集合した。
「なあ、今朝の階段でのあいつの態度を見ただろう? あの余裕ぶった顔は、間違いなくオレたちなんかには捕まらないっていう顔だぜ」
コウが部室に入るなり、怒りの第一声を放った。
「アリス、こうなったらあの野郎をいち早くワナに嵌めて、正体を暴いてやろうぜ!」
「ちょっと待ってよ、コウ。ミユさんが襲われたから、ワナの話は保留するってことに決めたでしょ?」
アリスはともすれば早まった行動に出そうなコウに釘を刺した。
「そんな悠長なことを言っていたら、あとの二人だって襲われちまうかもしれないぜ? そうなってからじゃ遅いだろう?」
「そんなことぐらいは、あたしだって分かっているわよ!」
言い合いのするのはコウと櫻子の二人と決まっているが、今日ばかりはアリスもついコウに食って掛かってしまった。それだけアリス自身も心に余裕がないということだった。
最初のコメントを投稿しよう!