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アリスとコウは素直に謝った。それで部室内の重たい空気が完全に一掃された。ほのかだから出来る芸当である。
「──姉さん、ありがとうね」
のどかがほのかに軽く頭を下げた。
「いいえ、どういたしまして」
「それで、姉さんはどうして部室に来たの? あっ、もしかしたら、今朝みたいに池口さんの容態のことで新しい話でもあるの?」
「違うわよ」
あっさりと否定するほのか。
「それじゃ、どうしたの? まさかわたしたちの言い合いの声が外まで漏れていて、わざわざ止めに来たとかじゃないわよね?」
「そうじゃないわよ。あなたたちの耳に入れておいた方がいい話があったから来たのよ」
「えっ、話って、どんな話なの?」
「でも、話をする前に、ひとつだけ言っておかないといけないことがあるんだけれど──いいこと、今のご時世、生徒たちのプライベートなことについては、いろいろとうるさいのよ。やれプライバシーの侵害だの、やれ人権侵害だの、本当にうるさいんだからね」
ほのかが珍しく養護教諭らしいまともな意見を述べた。
「うん、それは十分に分かっているから。それで肝心の話を聞かせて欲しいんだけど──」
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