740人が本棚に入れています
本棚に追加
/15ページ
はぁ。どうしよう。なんの打開策も浮かばない。
あれから数日経った。今日も二年の女子がキャッキャしながら高野君を見てた。先輩から名前を聞き出したのか、高野君に呼びかけないけど「晴くんカッコイイ」とか言ってる。その度にメラメラしちゃうし、先輩を睨みつけたくなる。今はまだ高野君は気付いてないけど、女子の先輩からラブコールされたらどう思うんだろう。
部活が終わったあとも、高野君と歩きながら肉食女子にどう対抗すべきかとグルグル悩んでしまう。スッカリおとなしくなった僕に高野君が言った。
「なんか、元気なくね?」
「え、そうかな」
わっ! 高野君が心配してくれた!
テンションがビュンッと跳ね上がる。顔がニヤケそうになるのをグッと堪えてると、おでこに高野君の手のひらがふわりと当たる。
ひえぇぇぇぇ~!
一気にボッと顔面が熱くなったと思ったら、ふわんと涼しげな香りが鼻をくすぐった。さすが高野君。あんなに部活で頑張っていたのに、なんて爽やかな香り。きっとシーブリーズしたんだろうけど、それだけじゃない気がする。だってすごくいい匂いなんだもん。あぁ、この香りに包まれたい。
「マネの仕事、キツイとか?」
「ううん……ありがとぉ……」
顔が発火したせいか、それとも香りのせいか、長湯したときみたいな感覚になって、ポーッとした声が僕の口からふよふよと漏れ出して行く。
高野君の手が離れたと思ったら、今度は目の前に高野君のドアップ。キラキラお目めで目の奥をジッと見つめられ、息が止まった。
「俺に隠し事するなよ?」
「しっ! しひぇあい」
ち、近い、近すぎるぅ。今までに無い超至近距離っ!
頭がクワンクワンしてそのまま、周りの景色がブワンと流れていった。
最初のコメントを投稿しよう!