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第1話 死んだと思ったら
高校生活の最後の夏休み、俺の幼馴染である高坂由佳は死んだ。
交通事故だった。誰の所為でもないただの事故、神様のイタズラだ。
通夜に出席した。モノクロ染みた通夜だった。
遺影には笑顔の由佳の写真が貼られていた。
由佳の両親はやりきれない表情をしながら泣いていた。
俺も泣いていたのだろうか?
よく見ると、涙は出ていない。隣にいる妹はボロボロ涙をこぼしていた。
とーぜんだよな。長年、一緒に遊んでたまには一緒に食事をとったりもした。
妹にとっては、姉のような存在だったのだろう。
俺にとってもあいつは妹のような感じだった。
毎日、俺に我がままを言ってきて俺はよく困っていた。
でも……そんな毎日はもうこないだろう。
はっきり言って、飯は満足に食えなかった。
高級な寿司を食べたけど、おいしいなんて感じなかった。
「お兄ちゃん……帰るよ」
通夜が終わって他の人たちも帰る準備を始めても俺の意識は遠かった。
「さきに帰っててもうちょっとここにいる」
「うん、わかった」
妹は素直に頷いて先に帰宅した。帰宅とは言っても家はすぐ近くだ。
「………」
由佳の両親が静かに遺影を覗いていた。
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