王家の双子

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「ひっく……うっ……。ユーリ!私がヴェルダニアに行っても会いに来てね!」 「うん、勿論!絶対に会いに行くよ、ミーア。約束する。」 そのまま、二人は目が真っ赤に腫れるまで薔薇園で抱き合って泣いた。 鼻腔をくすぐる甘い薔薇の香りと、夜空に浮かぶ真っ白な月。潤んだミーアの翡翠色の瞳。 きっと、この夜のことはずっと忘れない。ミーアを抱き締めながらユーリは静かにそう思った。 *** それから間もなくして、ハーディテェルツ王国とヴェルダニア王国の同盟は無事に締結された。 ハーディテェルツ王国が他国の侵略を受けた際はヴェルダニア王国が介入するというものだ。逆もまたしかり。 そのお陰で、ハーディテェルツ王国の北の国境あたりに駐屯していたトゥーラクの軍隊も撤退した様子。 ミーアとクロードの婚姻についても着々と準備が勧められていた。 *** 「ミーアとクロード王子の婚約発表の夜会、ヴェルダニア王城で行われるんだって?」 執務をこなすユーリに、フランツが声をかける。 「そうだよ。ミーアはその折に初めてクロード王子と対面するんだ。」 「勿論、ユーリも出席するんだよな?」 「うん、なんだかんだヴェルダニアに行くのは初めてだ。少し緊張するな。」 「同盟国とはいえ、ヴェルダニアは狡猾な国だ。トゥーラクのように武力でではないが確実に領土を広げて行っている。」 どうやらフランツはヴェルダニア王国のことをあまり良く思っていない様子で、眉間には深い皺を刻んでいた。 「ユーリも油断するなよ。とくに、クロード王子は冷徹で氷のような男だと……。」 「もう!フランツ!それ絶対にミーアの前で言うなよ!不安にさせるだろ!」 ユーリに怒られ、フランツは叱られた子犬のようにしゅんとして肩を落とす。 「クロード王子か……。」 ユーリは過去に一度だけ、クロード・ヴェルダニアと会ったことがある。あれはハーディテェルツ王国の建国祭の時だった。 ヴェルダニア王国からの来賓としてクロードが出席していたのを覚えている。 しかし、その時のユーリは八歳。記憶も朧気だ。うっすらある記憶の中のクロードは、銀色の髪をした透き通るような美少年である。
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