王家の双子

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「どんな人なんだろう。」 どうか、双子の妹の婚約者が噂ほど酷い男じゃありませんように。ユーリはただ、ハーディテェルツ王国の山の神に祈ることしか出来なかった。 *** いよいよ、婚約発表の夜会に向けてミーアがヴェルダニア王国に出発する前日。 彼女はその日も、いつもと変わらず薔薇園のガゼボの下にいた。 「ミーア、あまり外の風に当たっていると風邪をひくよ?」 執務の合間に、ユーリはミーアの元を訪れる。このところの彼女はやはり元気がなく、塞ぎ込んでいる様子だった。 「ユーリ、しばらく戻れないんだもの。お気に入りの場所にいたいの。」 「そうか……。」 ユーリがミーアの隣に腰掛けると、彼女が手を伸ばしてきてユーリの髪に触れる。 「私たちって、髪の色も長さも一緒ね。」 「うん?そうだね。成人の儀が終わるまでは短く出来ないから。」 王家の古くからの決まりで、ユーリは亜麻色の髪を長く伸ばしている。 「後ろで編んでないと邪魔で邪魔で……。」 「編んでもらってるの?」 「いや、自分で。旅先ではフランツにやってもらったりしてたけど……。」 それを聞いて、ミーアが口をへの字に曲げた。 「あんまり無自覚でいてはフランツが可哀想よ?」 「……何の話?」 ユーリのその様子に、ミーアは呆れ顔で項垂れ、彼の顔を横目で流し見る。 「瞳だって同じ色で、顔もそっくりなのに……。私、女というだけで他国に嫁がないといけないのねぇ。」 「ミーア……。」 「やっぱりちょっと、不公平!」 ユーリはかける言葉が見つからず、ただ彼女の隣にいることしか出来なかった。 するとミーアは立ち上がり、若草色のドレスを揺らしてガゼボを出ていく。 「ミーア?」 「ユーリ、お城に戻りましょう。」 陽の光が差し込んで、逆光で彼女の顔が見えない。 「あのね、心配してくれてありがとう。私、ユーリみたいに優しくてしっかり者にはなれそうにないわ。」 「?」 「ごめんね。」 どうしてミーアが謝ったのかユーリには理解出来なかったが、彼女の声色がいつもと違って真剣だったので問うことが出来なかった。 もしこの時、彼女とちゃんと話をしていたら、あんなことにならなかったのかもしれない。 今のユーリは、それに気付く由も無かった。
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