エピローグ

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エピローグ

 死んだものを生き返らせることはできないのなら、死なないようにすれば良い。  件の処置を開発した彼は、かつてそう考えた。  ところで、心臓が止まったり血管が詰まったりすると何故人は死ぬのだろうか。  それは酸素や栄養の供給が絶たれるからだ。  心筋梗塞では冠動脈が詰まり、心臓への酸素や栄養の供給が絶たれる。そうなると心臓の細胞が死滅し、心臓の細胞が死滅すれば鼓動は止まり、全身の他の細胞への酸素や栄養の供給も止まり、人間自体が死ぬ。  脳梗塞では脳の血管が詰まり、脳細胞への酸素や栄養の供給が止まり、脳細胞が死滅する。  つまるところ、死ぬのは各細胞が生きていくのに必要な酸素や栄養を、血流を介した供給に頼っているからなのだ。  では、各細胞が自前で酸素や栄養を作り出せたらどうだろうか?   例えば植物の細胞のように、光合成により自ら酸素と栄養を作り出せたら?   だが人間にとって重要な臓器である脳や心臓は体の深部にあり、植物が光合成に利用するような光では皮膚をはじめとする他の組織を透過してそこまで到達することができない。
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