第三章

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「何を言っているんだ……?」  わけが分からなかった。  この場合の被疑者というのは無論、私のことだろう。その私が死亡してしまったとはいったいどういうことだ。私はこの通り生きているではないか。 「おや、知らなかったのかね?」  法相は驚いたように眉を上げてみせる。わざとらしいことこの上ない動作だった。 「法律では心臓が止まった時点でその人間は死んだものと認定される。歩いていようが歌っていようが、そんなことは何の関係も無いのだよ。そして君の心臓が止まっていることは、既に確認済みだ」 「なっ……」  私は慌てて自分の胸に手を当てた。とく、とく、とく、といつもより若干速く打つ鼓動が、確かに感じとれた。  処置を受けている私は、たとえこの鼓動が止まっても少なくともすぐに死ぬことはない。そのため気づかぬうちに心停止していたという可能性も無いとは言い切れず、確かめずにはいられなかったのだ。  だが少なくとも、私の心臓は今この時も動いていた。法的にであれ生物学的にであれ、私は今も確かに生きているのだと、強く主張していた。 「それこそデタラメだ! 私の心臓は今もちゃんと動いている。嘘だというなら、この場で確認してみれば良い」  法相は溜息をついて頭を振った。 「今更そんなことしなくても既に確認済みなんだよ。正式な診断書にも、ちゃんとそう記入されている。というわけで、お前はもう死んでいる」  そして、法相はニヤニヤ笑いながら更にとんでもないことを言い出した。
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