星林堂の少女

1/5
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/11ページ

星林堂の少女

 平成最初の夏、松平慧一は高校生だった。娯楽といえば、本を読むか衛星放送で録画した映画を見る程度だったあの頃、いつもの習慣でのぞいた本屋で、慧一は彼女に会った。  講談社、ブルーバックスの棚のところだった。 『毒物雑学事典』  ミステリ好きでもあった慧一が思わず伸ばした手と、彼女の手が合ってしまった。  驚いて、手を離し、手の柔らかさにドキドキしたのは、まだ梅雨の、紫陽花のキレイな季節の事だった。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!