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    夏が来た。 梅雨が明け、日中の気温が体温以上をたたき出す毎日は、もう地獄でしかない。 とりあえず通学はしないといけないから、私は毎日毎日、自宅から一番近い、坂の上に建つ高校に自転車で通う。夏休みまであと少し、頑張れ頑張れと己を叱咤激励し坂道を登りながら。 放課後、いつもどおり図書室で、委員の仕事を手伝いがてらエアコンの風に癒されている私は、けれど隣に座る後輩男子によって若干暑苦しい。 「……井ノ上くん。もっと離れてよ」 「やだ。美緒先輩の一番近くが一番涼しいから」 「部活は?」 「今日は生徒解放日だから休み」 「それでも泳いでくれば? プールは開いてるんだし」 「じゃあ美緒先輩も一緒に行く?」 「塩素が駄目なのよ」 「そっか。美肌の為に気を付けてんだね」 「……馬鹿か」 美肌でもないし……。 そんな肌質キープな理由で体育の授業を見学、ましてや保健室待機なんて出来るわけがない。 私は、肌が人よりだいぶ弱くて、長時間の強い日差しに耐えられない。週に一度の皮膚科通いによって、それなりの見た目に保たれてはいるけど、注意が必要で。 体育を見学だけでなく、特に今の季節は登校時間はなるべく早く、下校時間は日が落ちてからに越したことはないけど、防犯上の理由でなるべく遅らせるに留まり、太陽があまり高くないときを見計らう。 汗をたくさんかくこともあまり良くないから、夏は特に気をつけて過ごさなければいけない。痒くなって痛くなって泣くのは、自分なのだ。
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