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クリスタリアは渋々距離を取る。ジャックはモグラが起き上がったところに蹴りを入れて、そこへ婿殿が一撃を打ち込んだ。肉弾戦では不利だとみるモグラは魔方陣を展開するが、それをクリスタリアが封じ込めるというコンボだ。一つ一つのダメージは小さいものの、確実に体力を奪っていく。
「面倒な奴だな」
「無駄に頑丈ですね」
「一気に行きたくなるが」
「愚策ですね」
相手の防御力を考えてみろ、と言わんばかりの返答に、ジャックは嫌な顔をした。わかっている。そのための「が」なのだから。
二人が横目で火花を散らしつつある後ろで、クリスタリアは呆れていた。次の一撃に備えて魔方陣を準備しようとしたとき、不意に腿のあたりにしがみつかれて暴発してしまう。
暴発したそれは婿殿のルーンを打ち消してしまい、モグラはこれを好機と魔力を解放させた。あたりの地盤がひっくり返るように、砂地が割れて岩柱が乱立する。
「うわ!」
「これは見たまんまですね」
二人は上空に逃げつつ、岩を足場に飛び移りつつこれをかわした。
「ママ!」
「エイミ?!」
クリスタリアに抱き着いて彼女を見上げていたのは愛しの我が子であった。足元がぐらつく。
「クリス!かわせ!!」
「えっ?」
「ちょっと失礼」
生えてきた岩の勢いを使い、婿殿が彼女らのもとへ飛び降りた。その流れのまま二人を抱える。砂を割って見えた岩の頭に片足を乗せると、一緒に宙へ舞った。できるだけ衝撃を抑えながら、二人を下ろすとくるりと踵を返した。ルーンを放ちながら、モグラを牽制する。
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