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その日はすごく寒かった。
時刻は、窓が室内の灯りで鏡みたいに自分たちの姿を写し出した頃だった。
着替えようと思って腕を抜いていたパーカーの裾は捲り上げられ、右手は更にキャミを上げようとし、左手はウエストリブのパンツの中に無理矢理侵入してくる。
あ、口はもちろん口に塞がれたまま。
仕事から帰ってきて、時間ないからバタバタ着替えてるとこだった。
時間がないのに本気のキスと手の動きは私から息を漏らさせ、右手がホックをプツンと外すと、その手は窓に伸ばされカーテンがシャッと引かれた。
「するの?行かないの?」
「だってお前が誘うから」
着替えてただけですけど。
「三泊もどこ行ってたんだよ」
仕事ですよ、知ってるでしょ。
「我慢できない」
「寂しかったの?」
「やりたかったの」
「バカ!」
ドンと胸を叩いて拒否すると、叩いた手が捕まりそのまま壁に押さえ止められ、キスは胸に落ちた。
「私もしたかったよ」
コソッと耳元に囁くと、どうやら火を点けてしまったらしく、そのまま勢いよくウエストリブのパンツはパンツと共に剥ぎ取らられパーカーも首から抜き取られた。
R18
しばらくお待ちください。
「行く気うせたーー」
力抜けて板間に座り込んだ私に、チュッチュチュッチュとキスをして汗ばんで張り付いた髪に指に通した。
「このまま風呂に入って二回戦したい」
「じゃあ二回戦やろ?貸して?」
「ちょ…もうホント行けなくなるって」
「したくなったでしょ?」
呆れた顔で私を見下ろすスナイパーな目。
大きなため息をつき私のデコをグイっと押して離した。
「お前そんなガツガツしてたっけ」
「誰かさんと付き合い出したら
誰かさんのガツガツがうつった」
本当に時間ない。
「続きはあとでな、覚悟しとけよ」
「覚悟しとけよ!明日休みだからな!」
「真似すんな」
クローゼットにした洗濯干し場兼クローゼットで
二人並んで急いで着替えた。
お揃いみたいな黒のニット
私は赤系チェックのショーパンにタイツ
一之瀬さんはデニム
私のバッグに財布を入れて
靴を履いた。
「行く前にもっかい」
クルッと振り向くと
ギュッと抱きしめて額にキスをした。
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