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黄昏の召喚
「優詩君!」
夕暮れ時。河川敷のグラウンドからの帰り道。舗装された土手道を歩いていた優詩は振り返り、野球帽のつばをあげると自転車に乗りながらこちらに手を振る紗栄子に気づいた。夏らしい白いコットンのワンピースを着て、すらりとした腕が半袖から伸び、手を大きく振るその姿はとても可愛いらしく、肩まで伸びた栗色のふんわりとしたウェーブの髪が風に流れていた。
ニコニコしながら自転車を優詩の側までつけると降りて、横に並んで歩き始めた。
紗栄子は長男 紘詩の婚約者で、秋に行われる披露宴の打ち合わせなど様々な準備で優詩の家に訪れることが多く、よく母と一緒に夕食を作ってくれていた。
「紗栄子さん、いっぱい買ったんだね!今日は何作るの?僕すっごくお腹減ったよ~」
「えへへ。お米も安くて買っちゃった!おかげで重くて重くて。優詩君は野球の試合があったんだよね。炎天下の中お疲れ様!」
「僕はもちろん試合には出てないんだけど、応援だけは頑張ったよ!」
日々の練習で日焼けをして六月半ばにしてもう真っ黒になった顔で照れた様に答える。
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