2・水神のいる神社

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「若いけどしっかりされているから、きちんと線引きしているように思えたの。つまり、ビジネスとしてね。ほら、神社って経営難でしょう? 裏山のあの神社だって、昔は地元の人が参拝して、宮司さんもいたということなのよ。勿論、何十年も前の話だと思うのだけど……」  確かに神社の八割以上は経営難で跡継ぎもなく、常駐の宮司不在だという話だった。  今はスピリチュアルブームで多少は有名な神社は潤っているらしく、一馬の家の神社もそのひとつらしい。 「こちらの仕事は神社として(おこな)っているわけじゃ無いのだと思います。始めたきっかけは詳しく知りませんが、純粋に神社に神様を呼び戻したいと考えているのだと思うんです。それに使命感を持っているというか……」  上手く言えないけど本当にそんな感じで、一馬は口コミでやってくる人々を情報源にしているだけで、ただ神様不在で良くない神社を探して、そのひとつひとつに対応しているように見える。 「あの人は営業用の顔はありますけど、元来ぶっきらぼうで余計な話をしません。だけど神社に神様を戻してその地域を……というか、恐らく日本全体を護りたいって気持ちが人一倍強いんだと思うんです。だから、ビジネスとは考えていないと思います。無情な金額を言い渡すのも、情報をくださる方々に負担をかけたくないからだと思うし、だけど相談料を取るのはそれなりに費用が掛かるからだと思うんです」
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