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「あと二日かあ……」
私はカレンダーを見て呟き、ウーロン茶の残りをストローで吸った。ずずずと音がする。
「こら、透湖。はしたないから音は立てないの」
「だって、最後まで飲めないんだもん」
私は空になったコップをシンクに置いて、ソファーに座った。母が洗濯物をたたみながら私を見た。
「夏休み、透湖どうするの?」
「おばあちゃんち行く」
「おばあちゃんちって、そんな早くから行かないわよ? お盆にならないとお父さん休み取れないし」
私は足をぶらぶらとさせて口を尖らせた。
「……一人で行く」
「足をぶらぶらさせるのやめなさい。
一人でって、高速バスで行くの?」
「うん」
母は洗濯物をたたむ手を止めた。
「私はそのほうが楽だけれどお義姉さんに面倒見ていただくのは申し訳ないわね」
「大丈夫だよ。私おとなしくしてるから」
祖母は一人で暮らしていて、近くにいる伯母がよく祖母の面倒を見に来ている。夏休みに祖母の家に行くと、伯母が毎年色々なところに連れて行ってくれた。恐竜の展示や動物園。伯母とそして従兄の将也と三人で行くのはとても楽しかった。伯母は子供心がわかる大人で、年の離れたお姉さんのようだし、そして、将也は私の憧れの人で、会えるだけで嬉しかった。
「将也君は何年生になるんだっけ?」
「中三だよ」
「透湖の二つ上だった?」
「そうだよ」
「あなた達、顔も似てるし、兄妹によく間違えられてたわね。でも、もう二人とも中学生。昔のように遊ばなくなるかもしれないわね」
私はソファーから立ち上がった。
「なんで? そんなことないよ。将也はいつも私と遊んでくれるもの」
「……いつまでも子供じゃいられないのよ。
それで、いつから行くの?」
「夏休み入ってすぐ」
「それはだめ。せめて八月に入ってからにしなさい」
「はあい」
私はしぶしぶ返事をして、二階の自室に上がろうとする。
「エアコンの温度は28度までしか下げちゃだめよ」
母が言うのが聞こえて、
「はあい」
またしぶしぶ返事をした。
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