第六章 魔晶獣

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「ヘルナくん、障壁を張ってステラくん達の援護を。ヌアザは私に任せたまえ」 「は…はい!堅牢なる岩の盾よ…『フォートレス』!!」 指示通りにヘルナが唱えると、地面から岩が隆起して全員を隠す。しかしそれを軽々とリヨルドは飛び越え、岩にめり込んで身動きが取れないヌアザへと近づいていく。 「…そしてアーディくん。仲間を守らんとして前に出た勇気、岩片を全て払い除けた技量は認めよう。君は必ず成長するだろう」 「……!」 あれだけの戦いぶりをしながら全てを見ていたのか。まさに底が知れないという言葉しか浮かばなかった。 そして、力を蓄えてきたステラが走ってくると、岩を飛び越えたリヨルドと入れ替わるように、一方的にハイタッチしてこちらに滑り込んできた。 「はいはい、皆落ち着いてねー。あーしにかかれば一発で元気になるから!」 「ステラさん、ヒーラーだったんですか?」 「いや、簡単なやーつならメテオキャリバー持ってる人なら誰でもできるし。持ってるだけで効果出るかんね。…ま、あーしは回復魔法も覚えたんだけど」 そう言うとステラは手首にはめていた銀の腕輪を外し、両手で握ってから掌に置いた。すると腕輪が光だし、ゆっくりと頭上に浮かび上がる。 「輝ける天輪よ、穢されし彼の者に奇跡を授け給え。『シャワーヘイロー』」 声に応えるように、腕輪から光の粒子が降り注ぎ始めた。まるで旅立ちの日に見た月光のような銀の光。それはアーディとロゼットの体に降りかかると、雪のように溶けていった。そしてそれと同時に、アーディの体調も少しずつ良くなっていくのを感じた。 「こ、これがメテオキャリバーの力…!吐き気や熱が消えていく、手に力が入る!これでまた戦えそうだぜ!」 「おー、さすがに頑丈だねアー君。けど、ロゼっぴが…」 ステラの声がかすかに淀む。アーディが視線を伸ばすと、ロゼットは未だに横たわったまま目を開けない。同じ処置を受けたのに何故違うのか?アーディの脳裏に疑問が宿った。 「…『シャワーヘイロー』で大方晶気は取り除いた。きっとあの蔦の攻撃で体に晶気を刻まれたのかも。晶化【大】ほどではなさそうだけど、これは安静にさせなきゃかも」 「…俺が背負って山降ります。少し行けばグイードさんのキャンプがありますんで、そこに」 「いえ、私が何とかする。貴方はここにいて」 アーディの申し出を遮りながらそう言ったのは、他ならないメリシアであった。
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