彼らたち-1

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金曜日だった。 終業時間が過ぎ、サーバーに異常はなし。 夜勤の人に受け渡し、僕は素早く帰宅する。 普段なら。 だけれど、趣味で書いている乙女小説の書きためには余裕があるし。 部長は頼んだ仕事をチェックもせず帰るし。 暑さに頭はやられているし。 色々と言い訳をしたけれど、僕は久しぶりに夜遊びしたかった。 新宿二丁目。眠らない街。 オカマバーのママと話したっていいし、適当に知らない人とお酒を呑んでもいい。 いっそ一人で呑んでいたって、眺めるもの全て面白い。 そんな空気を久しぶりに吸いたくて、僕は会社から出てすぐに電車に飛び乗った。 めずらしくまともな恰好をしていたというのも、実は理由の一つにある。 シンプルな白いシャツの、上のボタン二つを開けて。 僕は二丁目に降り立った。
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