元彼というやつ

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※※※※  暑い、重い、苦しい。  それもそのはずだ。目覚めた瞬間私の目に飛び込んできたのは、まるで重しのように私のお腹の上に置かれた、腕だった。 「ぎゃっ!」  B級ホラー映画のような展開に一瞬変な声が出たが、なんてことはない、その腕の主は私を抱き抱えるようにして眠る、たろちゃんだった。 ──なぁんだ。  そう感じたのもつかの間、「いやいや、『なぁんだ』じゃないだろ」ともう一人の私が頭を(はた)く。  すやすやと無防備な寝顔を見せる彼はとてもセクシーで、密着しているという現実がまたもや体を沸騰させた。 「お、き、な、さいっ!」  自身の体からたろちゃんをひっぺがすと、彼の体を(くる)む布団を取り去ってやった。 「……んん……なぁに……千春さん……朝から元気だね……」  たろちゃんは瞼をこすりながら、まだ眠い目をゆっくり開けた。血圧を上げさせた当人が何を言うか。 「なぁに、じゃないよ! なんでベッド(こっち)に来てるの! 昨日決めたじゃない、たろちゃんはソファ(あっち)だって!」  そう、昨日たしかに決めたはずだ。一つしかないベッドで共に寝る訳にはいかないから、たろちゃんはソファで寝る、と。そしてその通り、昨夜は別々に寝たはずだ。なのになぜ?
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