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たろちゃんは大きな欠伸をしながら「へあ」と間抜けな声を出した。
「だって寒いんだもん」
そう言うと、ベッドから落ちた布団を自身の体に巻き付けた。まるで蓑虫だ。
「可愛く言ってもだめ! ちゃんと決めたことは守って! じゃないと即刻出て行ってもらうから!」
朝から大声を出しすぎてフラフラする。たろちゃんはわざとらしく「しゅーん」と言いながら冷蔵庫を開けた。
クローゼットから服を取り出しバスルームで着替えようとしたその時、プシッと小気味いい音が聞こえてきてふと足を止める。見ると、冷蔵庫の前で缶ビール片手にテレビをつけるたろちゃんが目に入った。
「は? え、なに、朝からビール飲むわけ?」
「うん、喉乾いたし」
そういう問題じゃないだろう。
この見た目とハタチということを考えても、社会人じゃないだろうなとは思っていたが、その上朝からビールを飲むなんて。とすると、彼は、どこかの学生なのだろうか。
思いついたのは『服飾系』という言葉だ。着ている服はシンプルながらもお洒落だし、こういう見た目の子がごろごろいるイメージがあった。
でも学生だとしても、定住していないというのはいくらなんでも無理がある気がする。
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