最終話 共に歩く未来

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「さて。もうそろそろ時間だな」  しばらくゆっくりした後、お父さんが時計を見てそう言った。手早く片付けて寺に戻る準備をする。  帰り際、もう一度みんな揃って、お墓に向って手を合わせた。 「また来るよ」  お父さんの言葉を合図にわたしたちは歩き出す。  数歩歩いた後、ふとわたしはお墓を振り返った。フワリと髪を撫でた風が、何故かわたしをそうさせた。  お母さん……見送ってくれているの?  そんな感傷に囚われて足を止める。だけど、すぐに笑って首を振った。  見送る必要なんてないよ、お母さん。これからもみんなで一緒に歩いて行くのだから。そこにはお母さんもちゃんといるのだから。 「カズ?」  足を止めたわたしに気付いて、仁が引き返してきた。おとうさんと希望は先を歩いている。 「どうした?」 「ううん、何でもない」 「――そっか」  仁は微笑むと、わたしに向って手を差し出した。迷いのない大きな手。わたしもためらうことなくその手を取った。仁の手はすっかり冷えて冷たく――それでもやっぱり温かかった。 「かずー! じんー! まだあ?」  道の先で、こちらに向って無邪気に手を振る希望がいる。どこか呆れた顔で、それでも優しくわたしたちを見守っているお父さんがいる。  心の中には、大好きな母がいて。  隣を見れば、わたしの全てを優しく包んでくれる微笑みがある。  わたしはこの人と共に歩いて行く。  この人たちと共に生きていく。  愛する家族と共に生きていく。 ( Loving home  完 )
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