俺は勃起不全

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俺は病院に行った。 理由は簡単だ。 勃起不全。 治るモンなら治したいからだ。 そして先生の診察を受け、 俺はこう言った。 「俺、勃起できるようになりますか?」 「一人Hが趣味なんスよ。」 対し、先生は…。 「うーん、難しいね…。」 と俺に告げた。 先生は続ける。 「今の世の中、機械の体が一般的だからねぇ。」 「もう生殖して個体を増やすって時代でもないし。」 「こう言った類の研究は、もうなされてないのだよ。」 俺。 「はい…。」 そう…。 俺が生きるこの世の中は機械の世界。 俺は極々少数派の生身の人間。 子供の時から同年代の友達はいなかったし。 彼女だっていない。 個体数が少なく、色々と不便な生身の体…。 だから、機械の体が主流になるのは当然な流れなのだ。 機械の体になれば、性格の差異はあれど平等な世界だ。 暴力も戦争も無い、平和な世界。 今の世の中、いわゆる理想郷(ユートピア)であるのだ。 そう。機械の体を持つ者にとってはな。 しかし、俺は何時だって少数派。 不便で仕方ない。  け  ど 「機械の体にはなりたくないんだよね?」 先生は切り出した。 俺は答える。 「はい。今の体に愛着がありますしね。」  そ  れ  に 「お袋が俺を産んでくれた、この体って思うと。」 「機械の体になろうって気にはなれないんです。」 「不便でもこうして生きていきたいと思うんです。」 先生は…。 「ふむ…。」 と、少し困った顔をした。 また、やっちまったか。 俺はそう思った。 機械の体を持つ者にとって、俺は異端でしかない。 当たり前の事を話すだけで、変な奴だと思われる。 正直、そう思われるのは辛い。 俺の当たり前は当たり前じゃあないのだ。
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