バレンタイン休暇

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「確かに優しい人が好きですけど、見た目だけでなく程よく会話も出来て、殺気もない人を探しますので暖かく見守って頂けますよう(せつ)に願います」 「何気に悪口挟んだ挙句、全員拒んだ感じだけど百合ちゃんは照れ屋だからな」 八雲さんは全く動じない感じでコーヒーを飲み干すと、全員を部屋の入口まで連れて行くのでホッとして見送りに出た。 ドアを開け一人づつ出て行くのを確認していると、最後に立った滋さんは八雲さんを蹴り出し、部屋に残ってドアの鍵を閉めた。 「コラァ滋っ、一人裏切ってんじゃねーぞ!ドアごと吹き飛ばすぞ」 「いいけど、その瞬間百合ちゃん連れて窓から飛び出すよ?質問が終わったらすぐに帰るから黙って先に行け」 無茶苦茶な言い分だと思うがこの人は本当にやりそうなので、ドアの気配が離れていくのを感じた。 「どうせ仕事辞めるなって言いたいんですよね、死んだ訳じゃないし、お互いの利害は一致してるかの確認ですか」 「話が早いね、瑠里は偵察に必要だけど俺の百合は金刺繍向きなんでね。それに、親族の嫁はもっと強くなって貰わないと命を落としかねない」 「はぐらかすの止めて貰えます?貴方達は使えるか否かのみで判断し、使えそうなら片腕を失くしても働かせそうですし」 ニヤリとする滋さんは椅子に座り視線はこちらに向けコーヒーを飲んでいるが、人の皮を被った死神にしか見えず、社長よりも冷酷だと思う時がよくある。 「さすがにそこまでは言わないよ、片腕になるとスピードが落ちるかもしれないし、バランスも取りにくくなると……」 「例えだよ!誰が片腕になって働くか、治療費一生貰って楽に暮らしてやるわ!」 「そんな熱くならないでよ、止めようとしてるって事は『使える』って判断してる表れなんでしょ?なら自信持って給料貰えばいいじゃん」 理屈では分かっていても、今回ばかりはこちらの気持ちの整理がついてないし、売り言葉を買う威勢もすぐにしぼんでしまう。
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