真夜中のシンデレラ

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 私はシンデレラ。  真夜中になるとその醜い容姿は美しく変貌を遂げるのだ。  そしてーー 「早坂くんっ!」 「美春ちゃん。今日もきてくれたんだね」  大好きな人に会いに行く。  彼の名前は早坂仁くん。  同じ学校に通っていて、毎日のように飛び交う浮わついた話は別のクラスである私の耳にも入ってくる。  見た目よし、成績よし、運動神経よしとくればモテないわけがなく、校内中の女子にとって所謂童話に出てくる王子様的存在だった。  いつも隣に連れて歩く女性は綺麗目が多く、風の噂で面食いと聞いた私は遠くから羨望の眼差しを送る他はなかった。  ーーなんせ平凡にすら届かない残念な容姿をしているから。  そんな私だが、午前零時を過ぎると道行く人が振り返るほどの超絶美人に姿形を変えるのだ。  転機が訪れたのはとある日の夜。学校のマドンナと廊下で楽しそうに話していた早坂くんを見かけて胸がきつく締め付けられたその日の夜だ。  洗面台の鏡で自分とマドンナの顔面格差を改めて実感している私の耳に、どこからともなく"声"が聞こえたのだった。 「君にファンタジーをあげるよ」  瞬間、目の前が優しい光に包まれて次に視界に入れたのはアイドル顔負けのとびっきり美人になった鏡に映る私だった。  夢を見ている気分だった。しかし自身の頬をつねってみると想像通り痛く、紛れもない現実だと認識する。  だがこの非現実的な現象は永遠でないと知り、朝方には元の姿に戻ってしまっていたのだ。  検証してみると真夜中限定らしく、その時間は正味3時間といったところ。  つまり"月下美人"に生まれ変わったのだ。  例え時間制だと分かっても、折角掴んだこのチャンスを無駄にするものかとさっそくSNSを始めて自撮りを載せてみた。  すると一晩の間で多くのイイねを獲得し、徐々にSNS上では「彗星の如く現れた美少女」とネットアイドルとして有名になった。  
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