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あれは小学校の低学年の頃だったか。近所に大きな公園があって、そこで毎日、クラスメイトや同じ学校の生徒など、ちょうど居合わせた子供たちと遊んでいた。
家から近いこともあり、その公園は好きだったが、裏手に墓地があるので苦手意識もあって、そちらにはなるべく近づかないようにしていた。日が暮れてから訪れることもなく、夏の夜の花火もその公園でしたことはなかった。
そんな公園である日、一人の男の子に出会った。彼はいつも公園を横切るようにして抜けて、私が苦手にしていた墓地へ向かうのだ。
お墓なんて怖いところによく行けるものだと、いつも感心させられていた私は、遊び相手がいなかったあるとき、肝だめしでもする気分で彼の後をついてゆき、墓地の入り口の手前で声をかけた。
「なぁなぁ、どうしてお墓に行くん? 怖くないん?」
多分、そう言ったはずだ。すると彼は、こう答えた。
「怖くないよ。だって、お母さんがいるもん」
そうか、お母さんがいるのか。それなら怖くない。
納得した私はその場で彼と別れて公園に引き返し、別の遊び相手を探した。
彼に話しかけたのは、それが最初で最後だった。
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