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今ほどは熱中症の話題も多くなかった十年以上前の夏、U君は会社の行事でバーベキューに行った。
慰安旅行のない会社だったので、日帰りではあるが、隣県の山で雰囲気だけでもそれっぽく、という趣旨だったらしい。
ほぼ全員強制参加のように休日に参加させられ、内心では面倒だなという不満はあったものの、生まれてからもずっと東京で暮らすU君は、行ってみれば珍しく見る山なみや大きな木に意外なほど癒されたという。
バーベキューの施設はきっちりしており、素人でもできるようになっていた。自然と家族連れとそうでない組はだいたい別れ、U君は予想していたよりは楽しくその時間を過ごしたそうだ。
夕方に撤収しようとすると、上司であるSさんがU君に言った。
「あれ、Nは?」
NさんはU君の先輩にあたる男性で、U君と同じ独身男性の多いところでつい先程まで一緒にバーベキューをしていたはずだ。
それが見回しても、いない。
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