第5話  『雨』

1/7
4人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ

第5話  『雨』

   失恋の後や、別れのシーンでは、よく雨が降り出す。まるで、登場人物の心を表すように。  涙が悲しみを流し、その涙を雨が洗う。    視線の先には、兄を抱きしめたまま動かないリンカと、もう動けないリンコウ。    リンコウの頭があったところから、とろとろと血が流れ、リンカの服に染み込んでいく。  リンカは叫ぶ、涙を流し、言葉にならない声が空まで届く。  でも、その悲しみは涙だけでは流せない。    見上げれば雨は今にも降りそうなのに、暗い空からは一滴の雫も落ちてこなかった。      
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!