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『魔族は弱肉強食の世界で切磋琢磨すると聞きますが、あのメガネというぬるま湯に浸かって牙を抜かれたのかしら?』
マイが放った言葉には殺したい程怒りを覚えたが、あながち間違ってはないのかもしれない。
人間達からの庇護、生死が問われない学生同士の安全な戦い、そして己を守り甘えさせてくれる大切なヒロ。
その全ての要素が魔族の闘争本能を少しずつ薄れさせていった。
マイに負けた日から今日まで、アイシャはずっと心ここに在らずだった。どうすればいいのか、自分は一体何に対して考え迷っているのか、それすらも浮かばなかった。
だが、ここに来てようやく理解する。窮地の戦いが思い出させてくれた。
ごちゃごちゃ考えるのはヤメだ。魔族は基本脳筋なのだ。ならば、本能のままに眼前の敵を粉砕する。それだけで良かったのだ。
彼等には感謝しなければならない。魔族の戦いとは一体何なのか、思い出させてくれたのだから。
意識が研ぎ澄まされていく。紅い眼光が、鋭く煌めいた。
「ハッ!!」
「うっ……!?」
敵が多い時に最初に狙うのは、最も弱い者だ。アイシャはレイジとニッタと攻撃を掻い潜り、ハルに刺突を繰り出す。
そうはさせまいとレイジがカバーに入るが、“そう来ると読んでいた”アイシャは刺突を中断し、仲間を助ける為に無理な体勢になった彼へと狙いを変更した。
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