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「海賊なんてのは他人の大事なもんを獲物にするもんだからね」
軽い足取りで近づいていた少女は、そう言って唇を歪めて笑った。
と、思うと唐突に走り出す。
驚きにメリッサがドアを閉める手を止めた隙をつくように一足に距離を縮めるとドアの隙間に手を滑り込ませた。
そのまま身体をねじ込ませてドアを開いたまま固定すると、片足を持ち上げて脇に倒れた護衛の腹を蹴った。
「……っ!」
腹を押さえて呻いた護衛の側頭部を、少女は腰に差していたサーベルの柄で殴りつける。
「……寝てた方が安全だよ」
くずおれた護衛を見下ろして囁きかけるように言うと、メリッサに手を差し伸べる。
「身の代金目当てに捕まりたくなければ一緒に来な」
-ーと。
明かりのない薄暗い階段を、少女はメリッサの手を引いて上がっていく。
看板の方からはいくつもの荒々しい足音とわずかながらも剣戟のものらしい甲高い音がする。
少女の向かう方向はそれに近づいているようで、メリッサは恐怖に震えてしまう。
「ねぇ、どこに行くの?」
メリッサの問いに少女はちらとだけメリッサを振り返った。
「声出さないで。見つかるから」
低く囁かれた声には緊張が感じられる。
メリッサは口を閉じて、手を引かれるまま足を前に進めた。
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