I loved you

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「そうそうそれ。アイラブユーを月が綺麗ですねって訳したやつ」 「でも今言われなかったら忘れてたよ。そーたこそよく知ってたな」 「この間読んだ本に書いてあっただけだけどね。完全に受け売りだよ」 ふふっと声をだして笑いながら、着ていたカーディガンの袖口で口元を隠す。 「日本人だなって感じするよななんか。愛してるとか直にいうんじゃなくてさ、愛するあなたと綺麗な月が見られてしあわせですみたいな意味も込めての一言なんだと思う」 「今日は随分ロマンチストですねそーたさん」 酔いが回っているのだろうけど、今日は随分可愛い酔い方をしていた。いつもだったら絶対に言わないようなことをヘラヘラしながら喋っている。これも旅の効能だろうか、壮太自身も意に介した様子はない。 「だってさ、そう思わない? 俺最近ちょっと読書してて、いろいろ知識豊富なんだよ」 言われてみれば読書している姿をよく見る気がする。 でね、と言いながら手招きするように手首をペコペコと動かす。少し顔を寄せると、壮太は「和歌の本読んでるの」と言った。 「和歌ぁ? 百人一首とかそういうの?」 はやくも侑介の想定していた範疇を超えた。 「そうそう、百人一首とか。百人一首読んでるわけじゃないけど、書道の勉強の一環で」     
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