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アジの次に、スモークサーモンを気に入った榊は 「朝飯で食った鮭と同じだ」と教えても 「だが、違う味わいであった」と かき氷シロップのように、また疑問らしい。 「そのさ、黒蟲の時の葵と菜々の両親だけどな 露みたいに、ルカが呼んだ訳じゃねぇんだよな? ルカの意思に呼応した精霊が呼んだのか? その場合、巫女的な要素を持つ精霊ってことになるぜ。聞いたことはないが、人の精霊かもな」 人の精霊、か。 誰かの精霊なら、それは人霊だ。 人全体ってことだ。 ルカは、残った思念や、人から溢れて流れてくる思念を読むことが出来る。 霊視のように起こった出来事を視るのではなく 想い なんだそうだ。 その辺りが、精霊と縁を持つ何かに繋がっていそうだが、まあ、やっぱりオレには よくわからん。 「直接に、葵と菜々の父上や母上に どのように呼ばれたか、聞ければ良いのではないかのう?」 榊が言うと、ジェイドが 自分のバケットからサーモンを抜いて「ほら」と 榊の口に入れながら 「葵と菜々の両親の降霊をやるのか?」と聞く。 「ふむ」と、榊はサーモンを飲み込み 「しかし露さんがおらぬ故、直接に幽世で 御両親に話など聞ければ良いと思うのだが」と 朋樹に意見を求めるように視線を向けるが 朋樹は、シェムハザに眼をやる。 「... いや、それなら扉を開かなくても スクリーンがあれば、月詠に聞ける」 シェムハザは、なるべく月詠に 今回の話は知られないようにしようとしているようだ。 サリエルを脱走させるきっかけを作ったことを 気にしている。 「そうだね。扉は開かない方がいい」 ジェイドは、海の家の方に視線を向けた。 そうか... “キミサマも いたした” だったな... ボティスが月詠さんに、何 言うかわからんしな。 「朋樹を介して、俺が聞こう。 ディル、スクリーンを。小さいものでいい」 それも取り寄せんのかよ。 「それと、スモークサーモンを」 榊用か。気が効くよな、シェムハザって。
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