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22世紀的懐古主義
時は22世紀、所は製品開発部。
人気のないオフィスには寂しさが溢れて、それがまた余計に会議室から漏れる声を響き渡らせた。
「社員の諸君!今日わざわざ集まってもらったのは他でも無い、君たちの営業成績についてだ!」
営業部長が重々しく言を告げ、他の社員をじろりと睨みつけた。
すると、正面のモニターには立体グラフが現れ、それを見た社員の一同の顔は強張る。
「我が社はこれまで三十年という月日を全て右肩上りで過ごして来た!これは誠に素晴らしいことだ!ぜひみんなで称え合おうじゃ無いか!」
そう言って、一人寂しく拍手を始める営業部長に続く者はいないが、それもそのはず。
「そうだよな!?祝う気にはなれないよな!?なんせ今年の営業成績がこれだからな!!」
30年間の輝かしきグラフには隠されていた翌年のデータが付け加えられ、その落差の激しさが露呈する。
「半分だよ!半分!わかる!?半分!!一体どうしてこんなに落ち込んでんだ!?ああ?」
もちろん反応できる社員などいない。
しかし、営業部長はあえて気の弱そうな社員を指定し、背中を叩いて席を立たせた。
「よし!じゃあ、お前!言ってみろ!」
「そ、それは、わ、我々、商品開発部の・・・」
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