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夏が来た
今から30年前。
僕らは特に何をするでもなく、ただ暑い夏を乗り切ろうとしていた。
この町は、岩手県のとても辺鄙な場所にあって、最寄りの駅までバスで30分。市街地に出るには、更にそこから20分ローカル線に乗らなければならなかった。
車窓から見える景色は田畑と住宅ばかり。その他と言えば、飲み屋とコンビニと小さな商店街くらいしかなく、こんな場所で一体何が出来るのかと、愚痴りたくなるような所だった。
そんな僕たちが、ある小さなきっかけで、夏休みの間だけ何よりも夢中になったものがあった。
あれは高校2年──夏
「よう、のっぽん。今日俺んちでファミスタやろうぜ。大会やろう。トーナメントで」
「タツ、またファミスタ? 違うカセット無いのかよ。なあ、イッキそう思わねえ?」
「ああ、もう飽きた」
放課後の帰り道。川沿いのあぜ道を、自転車で走る僕ら三人はいつも一緒だ。
のっぽんとは僕のこと。やせ型で、もちろん背は高い方。
小さいが気の強い達也はタツ。
のんびり太っちょの一樹はイッキと呼ばれている。
「なら、一つ提案があるんだけど」
「なんだよ」
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